
野球漫画の大家、水島新司さんの作品です。
【ストーリー】
プロ野球球団東京メッツの個性的な選手たちのエピソードがオムニバス形式で語られる。「水原勇気編」は、史上初の女性プロ野球選手・水原勇気のメッツ入団、魔球・ドリームボールの完成、そしてドリームボールの生みの親ともいえる元チームメイトの武藤との真剣勝負でクライマックスを迎える。
超個性的な選手たちが目白押しのプロ野球球団・東京メッツを中心に展開しますが、その個性派選手たちの活躍や人間ドラマがオムニバス形式で描かれています。50歳を過ぎてよれよれになっても現役投手として投げ続ける「よれよれ18番・岩田鉄五郎」、酒に酔っての投球でボールまで酔っ払っている(?)「酒仙投手・日の本盛」、歌舞伎の女形から転身したスラッガー「藤娘・国立玉一郎」、不思議なジンクスによって奇妙な活躍をする「甚久須」などなど、とにかく破天荒なキャラクターたちの暴れっぷりと”野球狂”っぷりがとても楽しい作品です。
そして言わずと知れたこの作品の代名詞的キャラクターの「水原勇気編」は他のキャラクターのように短編でのエピソードではなく、文庫版でも5巻分丸々続く長編になっています。女子高校野球のエース投手だった水原が岩田鉄五郎に説得されてプロ野球の世界に飛び込むところから物語は始まり、当時の「女性は選手登録できない」という野球協約の突破、先輩捕手の武藤平吉との出会い、そして魔球・ドリームボールの完成、クライマックスでは広島カープに移籍した武藤平吉との真剣勝負・・・実に丁寧に、アツく描かれています。
プロ野球といういかつい男の世界で臆する事なく苦難を突破しようとする水原のけなげな姿がとても魅力的です。その魅力というのはストーリーやキャラクターの性格づけももちろん秀逸なんですけど、絵もとても素晴らしいです。ページ上部の画像は、ドリームボールを投ずる水原のフォームですけど、何と美しいことか!余談ですけど、水島新司さんは野球のプレーの絵を本当に大切にされているそうです。それをあらわすエピソードとして、元々のストーリーでは外野フライを打ったシーンだったのに、あまりに打撃フォームが美しく描けたのでホームランにしてしまった事があるそうです(笑)。
それから、テレビアニメ版も原作の良さが存分に詰まった仕上がりになっていますから、最高の作品だと思います。
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「ドラゴン桜」などの代表作を持つ三田紀房さんの高校野球漫画です。
【ストーリー】
一年生ながら夏の高校野球の地区予選にエース投手の故障などによって緊急先発登板した鎌倉西高校の四ノ宮だが、9回裏勝利目前で突然崩れサヨナラ負けを喫する。敗戦のショックから立ち直るきっかけは甲子園出場校の監督経験を持つ部長・貞兼の「普通のストライクを取れる投手」という言葉。投手としての成長の階段を登り始めた四ノ宮の成長とともに、鎌西校は県下屈指の強豪校へと躍進してゆく。
三田紀房さんの高校野球漫画として有名な「クロカン」は監督視点で描いた高校野球漫画の傑作ですが、「甲子園へ行こう!」はどちらかというと選手視点、全体的にはチーム全体を描いた作品となっています。私は高校野球に携わった経験はありませんからあくまで印象でしかありませんが、かなりリアルに高校野球というものを描いているように感じます。魔球や剛速球を投げる天才投手が活躍するような物語ではなく、主人公はあくまで普通の投手であった四ノ宮ですし、チームも普通の部活として野球をやっている弱小公立高校です。
そんな普通の投手を擁する普通の高校野球チームが強豪へと成長していくわけですが、練習シーンの描き方にしても試合での戦略面にしても非常に理論的で説得力があります。そして、実際強豪へと成長していくワケですが、連戦連勝というわけではなく普通に負けもします。それだけに、試合の部分を読むのが実際の野球を見るのと同じようにハラハラドキドキと楽しめます。ついつい必死に鎌西を応援している自分に気づくこともしばしばです。
それから、試合だけでなく練習や選手の日常も非常に丁寧に描かれていますから、主人公の四ノ宮だけでなく他のチームメイトや対戦チームのライバル選手にも感情移入することができます。ちょっと気持ち悪い言い方ですけど「青春っていいなァ」って感じですね(笑)。
野球漫画は大好きで本当にたくさんの作品を読んできましたけど、個人的にはベスト3に入る好きな作品です。
「BECK」などの代表作で知られるハロルド作石さんの本格プロ野球漫画です。
【ストーリー】
破天荒な剛球投手の主人公、毒島大広はそのあまりの破天荒さから野球部への入部すら認められず、さらに乱闘事件によって高校をも退学処分に。しかし、パ・リーグの「お荷物球団」と言われる弱小チーム・京浜アスレチックスのスカウトの目にとまり、ドラフト会議で指名され入団する。その後の彼の成長と活躍とシンクロするように、弱小チーム・アスレチックスの快進撃が始まる。
90年代中ごろの作品で、舞台となるのもその頃のパ・リーグです。当時のパ・リーグの個性的な実在の選手も数多く登場します。イチロー、伊良部、などのスター選手はもちろんですが、堀や初芝などの渋い選手も数多く登場するあたりが、ハロルド作石さんの”野球愛”が感じられます。プロ野球ファンなら思わずニヤリとさせられる楽しい仕掛けがたっぷり隠されていますから、ストーリー以外にもそういった部分でも大いに楽しめます。漫画同様にプロ野球も大好きな私としてはまさにストライクの作品です。
肝心のストーリー部分も、主人公毒島の選手としての成長と、チームの躍進の様子が丁寧かつダイナミックに描かれていて、引き込まれるものになっています。最終巻のクライマックスは、野球漫画史上に残ると言える最高の盛り上がりです。
特筆すべき点は野球のプレーシーンの絵のカッコ良さです。水島新司さんの野球漫画の絵もカッコいいですけど、この漫画ではまた違ったアプローチです。キレイでスマートな絵なんですが、独特のダイナミックさとスピード感が素晴らしいです。
チームメイトの脇役キャラクターも個性的で、実在の選手をモデルにしているような選手もたくさん登場しますから特に野球ファンにはこたえられないものになっています。個人的にはセカンドの三條のファンです。
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ストッパー毒島(7)
ストッパー毒島(8)
ストッパー毒島(9)
ストッパー毒島(10)
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